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第3話 日向の世界
この世界は争いばかりで……どうしようもなく救いようがない。
祖母がいなくなってから、親族の言い争う声が今もまだ頭の中にへばりついている。
(それでも俺は、この世界が好きだ)
どうしようもなく愚かであったとしても、きっと分かり合える時がくると信じて生きている。
きっとすれ違いだけで……分かり合えば、この世界も悪くないはず。
両親と連絡を取れなくなったけど、父も母も互いに幸せを再び手に入れることができたら、また連絡し合える程度には余裕ができると思う。
(いまの状況がつらいだけ。きっと未来は明るいし、きっと分かり合える)
そのときまでの我慢だと、自分自身に言い聞かせる。
見えないその先に、幸せがあるはずと。
仕事に就いてから友人との距離も離れたけど、合うことは出来るし連絡もできる。
昨日今日とメールの返信がなかったとしても、気づいたら返信も来るだろう。
幸せは足元に最初からあったりすると、日向は思う。
(それでもつらいときは、神社に来ることしかできないけど……)
何を願うわけじゃなくて、ただ安心できる場所として。
(大丈夫。明日はきっと晴れる)
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