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第4話 柊というモノ

「ところでアナタは誰?」  普段は丁寧な言葉を心がけているけど、どうしてか目の前の彼には砕けた言葉が口から零れた。 「柊(ひいらぎ)。キミは?」 「日向(ひなた)」  多くの言葉を交わしていないけど、なんとなく通じるような気がした。  そんなはずがないのに。 (誰だって言葉を尽くしても、まっすぐに伝わらない。でも――)  ただそばにいるだけで、日向は安心する。  いろんなことに疲れていたんだなと、今更ながら気づく。 「日向は細いな」 「そうかな? 身長は低いけど」 「細すぎる。身長も低いけどな」 「柊、ひどい」  柊のいいように思わず笑ってしまった。  そんなことないよ、と言われたことがあるけど肯定する人はいなかった。 「身長はともかく、きちんと食べろ」 「そうしておく」 (久しぶりに笑った気がする)   「これからも笑っていろ。笑う日向は好ましい」 「……ありがと」 「今日は『狐の嫁入り』だな。日向も私のところに来い」 「柊の嫁になれって? 無茶苦茶だ」  祖母が言っていた『狐の嫁入り』。  太陽の光があるのに、雨が降る天気。それを柊と一緒に見て笑い共有できる何かがそこにあった。 (柊は温かいな)    

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