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第4話
時刻はもうすぐ十一時。雨も止んでくれない。僕はスマホを取り出すと優真の番号を画面に呼び出す。連絡しようか……。なんて? ごめんなさいとでも言うつもりか……。僕は項垂れスマホを足元に転がす。
「ここにいても雨は止みそうにない……」
動かなければこれ以上濡れる事もないのだけれど、僕は濡れた身体を起こして雨の中を歩き始めた。
「ここ何処?」
見知らぬ景色ばかり。住宅街の中こんな格好でこんな時間に。変質者だと疑われても仕方ない。
「はぁ……」
出るのは溜息ばかりで八方塞がり。暗闇で足元も見えない状態の僕はまんまと水溜まりに落ちた。
「最悪……」
すでにずぶ濡れとは言え気持ちが悪い。どのくらい歩いたのか周りは未だ見知らぬ景色。
「クシュ……」
これ以上歩けないよ……。寒さに震えやって来たのは川沿い。
「寒いな……」
身を竦め立ち止まった瞬間スマホが鳴った。濡れたポケットから取り出せば雨粒で画面は直ぐに水滴だらけ。名前を見ると優真から。出てどうする? 出なかったらどうする? 迷った挙句僕はスマホを耳に宛てた。
「もしもし? 陽向どこにいるんだ」
優真の焦り声。息を切らして雨音? 外にいるの? それでも僕は声に出せないでいた。
「陽向っ!応えろ」
ビックリするほどの怒鳴り声。僕は思わずスマホを落としかけた。
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