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第5話
足元に落とす前になんとか拾い上げると、目に飛び込んで来たのはあの日クローバーから本物の指輪に変わった左手薬指。僅かな明かりを拾ってキラリと光る。
「……川沿い」
「何処の?」
「分からない……」
それだけ言葉にすると涙が溢れてきた。馬鹿だ僕は……。優真が浮気なんて出来るはずないのに。僕が一番分かっているに……。
「とにかくそこを動くな!分かったな」
そこを動くなって場所も分からない癖に。僕は身体を震わせながら川の流れを目で追った。なんて謝ろう。そんな事ばかり頭を過る。
「陽向っ……陽向!」
何処からともなく聞こえる優真の声。僕は必死に暗闇を探す。
「陽向っ」
声が近い、そう思った瞬間にはもう抱き留められていた。優真の身体もまた全身ずぶ濡れ。馬鹿だな傘も差さずに。
「やっと見つけた」
優真の声は息が上がり呼吸が荒い。ずっと走り回ってたのかな?傘くらい差してくればいいのに。僕は優真の腕の中で涙が零れた。馬鹿なのは僕だ。
「……なさい……ごめんなさい」
言い訳なんてもうどうでもいい。ただ体温が伝わってこない事実で僕は胸が締め付けられた。きっと何時間も探し回ったんだろう。僕と同じくらい熱が奪われている。そう思ったんだけど……。
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