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第6話
優真は突然僕から身体を離して額に手をやる。何?
「お前熱い。熱あるだろう……とにかく帰ろう」
熱? そんな筈ない。だって身体冷たいもん。そう思ったのに目の前が霞む。
「陽向? 陽向っ」
それからどう帰ったのか僕は分からない。あの場で僕は気を失ったのだ。言い訳どこじゃない。何にも話せないまま僕が気が付いたのは三日後の、ベッドの上だった。
「……ここ」
辺りを見渡すと見慣れた部屋。額には冷たいタオルとアイス枕が首に……。僕は必死に起き上がろうとするけれど身体に力が入らない。
「陽向、起きたらダメだ。熱やっと下がったんだから」
そう言って部屋に入って来たのは優真。髪を下ろし優しい眼差し。僕はベッドに寝かされると優真は溜息を吐いた。
「ごめん、俺のせいだな……三日間も熱に魘されてたんだぜ?」
三日も……優真もあれだけ濡れたのに顔色一つ悪くない。僕が弱いだけか……。
「仕事は?」
「行ける訳ないだろう」
僕はごめんと一言呟いた。優真はまた溜息一つ吐いて僕の顔を覗き込む。
「彼女とは何でもないよ……結婚するんだって報告されてさ、色々秘訣とか訊かれてただけ」
「……」
優真はそう言いながら額に手を宛てた。
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