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第6話
迫り来る絶頂に、新汰は背筋を震わせながら男の髪に指を絡ませた。
股の間では、升谷が一心不乱に新汰の昂りをしゃぶっている。
男の両手は後ろ手に赤い縄で縛られているため、口だけで新汰のものを愛撫していた。
ビクビクと脈打ち跳ねる新汰の性器を必死で追いかけ、綺麗な顔が涎と愛液で濡れていく様は酷く卑猥な光景で、それがまた新汰の興奮を煽る。
新汰はこれまで女相手のセックスでもこんなに高ぶったことがない。
男相手…ましてや兄についた悪い虫だというのに、フェラだけでこんなに興奮したのは初めてだった。
白い肌に映える縄。
壮絶な口淫のテクニックに焚き付けられて、新汰は低く呻く。
「…っく…もう出そうです…口に出していいですか」
返事も聞かず升谷の後頭部を押さえつけると、新汰はその小さな口の喉奥めがけて腰を突き上げた。
「ん…っぐ…っっんんん!!」
苦しげな声を発しながらも男が懸命に喉を開く。
女の性器を突くように激しいストロークで升谷の口を犯した。
美しい顔が苦悶に歪む。
凄まじい背徳感と喜悦に、新汰はあっという間に絶頂の階段を駆け上がっていく。
そうして何度か腰を突き上げると、熱い粘膜の中に盛大に己の欲望を放った。
ズルッと口から男根が引き抜かれ、薄い唇との間にいやらしい糸が伝う。
その糸までペロリと舐めとった升谷が全部飲んだ事を証明するように口を開いて見せてきた。
その光景に、少し萎えていた昂りが再び漲っていくのを感じる。
すると口元を拭った升谷が、突然部屋の入り口に視線を滑らせた。
「遅かったじゃないか、奏汰」
奏汰という言葉に、ハッとした新汰は振り返った。
そこにはいつものようにスーツをきっちりと着こなした兄が、腕を組みこちらをじっと見据えていた。
まさか、そんな…なんでここに?!
「に…さ…」
新汰は絶句すると固まった。
人は驚いた時に声が出なくなるというがそれは本当らしい。
喉に異物か何かが詰まったかのように全く出なくなる。
しかし頭の中は大パニック状態だった。
見つかってしまったという罪悪感と、嫌われてしまうという恐怖。
何か言い訳でもすればいいのに、それすら思いつかない。
暫くすると、兄がゆっくりと部屋に入ってきた。
がっかりした、もうお前の顔なんか見たくない、今すぐ家から出て行け。
そう言われるのを覚悟して息を呑む。
しかし新汰の予想に反して、兄は至って穏やかな口調で答えた。
「悪い悪い、急に仕事が入ってさ。でも今はじめたばかりだろ?」
新汰をチラリと見ると鷹揚な仕草でジャケットを脱ぐ。
まるで何事もなかったかのように…いや、寧ろこの状況を想定していたかのような兄の態度に新汰は更にパニックを起こした。
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