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第5話

睦月side 僕が小学校二年生の時、父親が死んだ。車を運転しているときに、速度違反をし、さらには、山道をふざけて逆走していた車と正面衝突。車は跳ね飛ばされて崖下に落ちて…、亡くなった。 頭部強打による即死だったらしい…。逆に即死で良かったと思えるほど身体はぐちゃぐちゃになってた…。即死だから、痛みは一瞬感じただけだっただろうと……。むしろ即死で無かったらかなり長く痛みを、そして苦しみを味わうことになっただろうと…。なんの慰みにもならないことを言われた………。 即死で良かった……なんて馬鹿な話はないだろ…。死んだ人は生き返らない…。死んだらそこで終わりだ…。長く苦しまなかったことだけが救いだったとしても、僕には分からなかった……。こんなぐちゃぐちゃになって、何が良かったの……?死んだら痛みは感じない……。でも、痛かったんだよ……? その日から、僕は母さんと二人で暮らすことになった。母さんと父さんは駆け落ちだったから親戚とは縁が切れていたからだ。女手一つで育てることは難しい…。水商売をしてても足りなくて、お昼はパートとして働いていた…。しかし、パートの仕事はうまくいかなかった。水商売をしてるとバレるとすぐに解雇された…。 母さんは日に日に弱り、アルコールに溺れ、遂に僕を売った…。それが小学校四年の時だ。 初めて男に抱かれた日。痛くて泣き叫んでも助けてくれなくて、ただただ『やめて』『助けて』『ごめんなさい』『許して』…そんな言葉を永遠に思える苦痛の中で叫び続けてた。 その日、母は帰ってこなかった……。 罪悪感があったからだろう……。あの人も、人間の母親だった…。息子を売った事の罪悪感に耐えられなかったのか、それとも自分の体を売ることに限界が来たのか、中学2年のとき母さんは首を吊って死んだ…。僕の目の前で……。母さんの亡骸は、穏やかに微笑んでいた…。首を吊って苦しかったはずなのに、それなのに……。 だから、僕は今でもウリをしてる。しないと生きていけないから、本当はもうやめてしまいたい…。もう生きているのも辛くなってきた……。それでも死ぬのが怖くて死ねなくて、ずっと生にしがみついてる。 家は売った。家賃とか色々払うのがきつくなったから…。荷物は学校のバックと、三日分くらいの服だけ。選択はコインランドリー、弁当はコンビニ、寝所は、その夜抱かれる男の家か、ラブホだった…。 そして時には悪趣味の人に当たる。つまり、SMや、緊縛、暴力のあるセックス…。あの雨の日の前日もそんな人に当たた日で、眠れなかったから、休んでいた。そこに現れたのが、『鈴木 愛生』僕の運命を変える人だった…。

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