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月曜日の夜(7)
「ひぁ…… っ」
綾人が短く声を上げて痙攣すると、後孔がぎゅっとすぼんで主人の昂ぶりを伝える。
身体の力が抜けてくずおれた綾人の性器から出たものが、水色のシーツにまだらな青い染みを作った。
和臣は手をのばして、肩で息をする綾人の金の髪をかき上げた。横顔の綾人が、けだるげに開けた横目で和臣を見上げる。
「綾人、よだれ出てる。」
和臣が微笑みながらそう言うと、綾人は一瞬責めるような視線を投げてから、恥ずかしそうに目をそらして手の甲で口元をぬぐった。
――かわいい。
和臣はおもわず目を細める。嗜虐の性癖はないものの、ちょっとした意地悪をしたときの綾人の反応がかわいくて、わざと恥ずかしがるようなことを言ってしまう。
街の夜は暗くない。すっかり目が慣れたためによく見えるようになった姿はナギサなのに、反応は綾人そのものだった。
「和臣…… は、まだ……?」
自身の中に入ったままの和臣の膨張した一部を感じているのだろう。背中に密着するように後ろから抱きしめる和臣に、綾人は訊いた。
「うん。なんとか、耐えた。」
「別に、耐えなくても…… 」
「だって、もったいなくて。ずうっと綾人に入っていたいんだもん。」
「もんって…… 」
綾人は後ろにひねっていた首を戻した。
「けっこう、飛んだね。」
和臣はそうささやくと、後ろから少し離れたところに手を伸ばす。シーツの青い染みの上に、少し浮き出た白い粘液を指ですくい取り、綾人の目の前に見せてからその耳元で音を立てて舐めとった。
綾人は前を向いたまま少し震えている。漫画なら耳まで赤面しているところだろう。
ーー かわいい。
もうずっとこうしていたい。
そう思うのに、和臣の胸の奥から不安が沸き上がった。
ーー なんで、なんの味もしない…… ?
和臣は上半身をそらして背後にあるサイドテーブルから電気のリモコンを取ると、ぴ、ぴ、ぴ、と3回続けてボタンを押した。
「…… 和臣?」
「ああ、豆電球 だけ。」
リモコンを置いて枕を引き寄せると、綾人が脇によけていた布団をかけ、和臣の腕にそっとこめかみを乗せた。一緒に暮らしていた頃、愛し合った後に、よくそうしたように。腕の中に収まる肩幅に、たまらなく懐かしい気持ちになる。
布団の中で、綾人の体温を感じた。確かに触れられる。話もできる。なにより身体はつながったままだ。それなのにどこか、現実味がない。夢の中のように、なにかつじつまが合わない。
「この間、ごめん。」
和臣がそう言うと、綾人は不思議そうな顔で振り返った。
「…… 夜。俺、むちゃくちゃしたよな。」
「ああ、…… フェラ…… とか?」
「うん…… 」
「自分で慣らせとか?」
「…… 。」
「オナ―― 」
「ちょ!ちょっと…… ほんとに、ごめん。」
思い出すと冷や汗が出る。ナギサが綾人だと知っていたら、絶対にあんなことはさせなかったのに。
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