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月曜日の夜(8)
「…… うん、実はびっくりした。和臣ってこういうとこあるんだなって。でもなんか、綾人 って大事にされてたんだなって思って、ちょっとうれしかった。」
綾人はそう言って微笑んだ。
「あ…… っ」
綾人の中に入ったままの、半分萎えていた性器に張りが戻る。
「ちょ…… っと…… 」
「もう、動いてもいいだろ?話しながら、ゆっくりしよう。」
「でも…… あっ…… やだ、これ……っ。話、できないよ。顔見え…… ないし…… っ。」
「顔見ながら、したい?…… じゃ、電気、つける?」
「や…… っ、違…… っんん、あ…… っ」
後ろから手を伸ばして触れると、綾人のものも再び固く、熱くなっていた。
「…… いいね。」
耳元で低くそう言うと、綾人の身体がぶるっと震えた。
うなじにキスをしながら、後ろからゆっくりと揺する。その動きに連動して、ん、は、あ、と綾人は短く息を吐いた。
綾人の痩せた背中には、肩甲骨が浮いていた。その間には赤い小さな跡がある。腕を回して胸に触ると、とがった乳首の隣にあるもうひとつの跡に指が触れた。綾人の身体に3つある、小さな円いケロイド。一緒に暮らしていたときにはなかったものだ。
この身体は、綾人のもの。それならばこの跡は、事故にあったときの実際の綾人の身体にもあるものなのだろうか。
「これ、どうしたの?」
腰骨の跡に軽く触れながら訊くと、綾人の中が、一瞬ぎゅっと引き締まった。
「それは…… あんまり訊かないで…… 」
小さな低い声で、綾人はつぶやいた。無意識なのか、震える手で首をさすっている。
その反応だけで、和臣には、そのケロイドがどうしてできたのかがわかってしまった。強い怒りと悲しみがこみ上げて、胸がふさぐような思いだった。
和臣は綾人の肩を引いて振り向かせると、貪るようにキスをした。
「ん、んぁ…… っ、ふ、ん、んう…… んっ」
柔らかい唇の間から、綾人の甘い声が漏れる。
唇を離すと、透明な唾液が糸を引いて綾人の顎に垂れた。
「和臣、お願いきいてくれる…… ?」
ゆっくりと潤んだ目を開きながら、綾人がそう訊いた。
「…… 何?」
綾人は思いつめたような顔で和臣を見つめると、無言で身体を引いて後孔の性器を抜いた。
「んん…… っ」
「え、なんで…… ?」
和臣が口を開くと、綾人はそれを掌で制止した。不安げな目をそらし、言いにくそうに一度結んでから、綾人はその口唇から弱く言葉を紡いだ。
「…… つけないで、いれて…… 」
小さな、聞き取りにくい声だった。
「え……?」
「だから…… つけないで、挿れて、ほしい…… 。そ、それで、最後は、な…… 中で、出して…… 」
和臣は、自分が何かを聞き間違えたのかと思った。何をどう聞き間違えたら、こう聞こえるだろう。
ほんの束の間、そう考えた。
でもその間 は、綾人を傷つけたらしい。
「…… ごめん。やっぱり、厭だよね…… そんなの、汚い、よね…… 」
綾人は震える声でそう言うと、するりと和臣の身体から離れた。
「ごめん、忘れて。」
俯いて布団をはがすと、ベッドから下りようとする。
和臣が慌てて後ろから抱き寄せると、綾人の目に溜まっていた涙がシーツの上にぽたりと落ちた。
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