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第3話 -2*

 酔っているのだろうか。  多分二人共そうなのだろう。頭はふわふわとしていて、龍崎の提案はいつもならすぐはね退けていただろうに気づけば頷いていた。  酔っていたから、ブレーキが効かなかった。 「痛くない?」 「はい……、んっ、」  浴室の中声が響く。  中を洗う為と晃が起きて来て見られたら困るからと浴室に移動したのに音が響いて余計に羞恥心を煽られる。  浴室とはいえ服を着ているのはまだ幾分ましだろうか。とは言ってもカイの下半身だけは露出している為恥ずかしい状況に変わりはないのだが、先程から後孔にクリームを塗り込められ龍崎の指先がぬるぬると入っているものだからそれどころではない。  指は次第に奥に入り込む。ぐにぐにと中を掻き回されて気持ち悪い。龍崎の身体にしがみ付き、苦しげに息を吐き出した。  けれどそうしているうちに突然異なる刺激を感じびくりと身体が跳ねる。 「ここだね」  掠れたそこへまた龍崎が触れて来る。今度は狙って刺激を送られぞくぞくと訳の分からない感覚が全身を駆け巡った。 「や、やめ、もやめてくださっ、ひあっ」  初めて知る快感に怖くなった。  自分で慰めるだけでは得られない他人から送られる快楽に頭の中が蕩けそうで真っ白になる。 「大丈夫、落ち着いて」  ぽんぽんと頭を撫でられる。はあっ、と深く息を吐いて子供のように龍崎に抱きついた。 「やめる?」  とんとんとあやすように背中を叩かれ、少し考えた後首を横に振った。怖いけれど、ここでやめてしまうのはもっと情けない。  そうだね、と龍崎の柔らかい声が耳に馴染む。  響くからと唇を噛んでいたのに、もうそんな余裕もなくなっていた。 「すごい……。カイ君、君はすごいね」  龍崎の熱い吐息が耳元に吹き掛かる。ぞくりとして、肌が粟立った。  あの時自分がどうなっていたのか、カイは最後意識を飛ばしてしまった為あまり覚えていない。ただ女のように淫らに声を上げ何度も絶頂を迎えた事は何となく覚えている。  それが恥ずかしくて堪らなくてもう龍崎の顔を見れないと思うのに、朝晃の隣で目覚めてから初めて顔を合わせた龍崎はいつもと全く変わらなかった。  大人の対応とは素晴らしい。きっとなかった事になったんだな。そう思ったがカイの考えは少し甘かった。  基本的には以前と変わらない生活。けれど、晃が寝静まった後二人きりになると性的な触れ合いをする事が増えた。  男同士でも愉しめるんだよ、と龍崎は色々な事を教えてくれる。  身体の色んな場所を舐められたり、擦り合ったり。  気恥ずかしさはあったが龍崎が与えてくれるそれらはどれも気持ち良かったし好奇心もあった。だからそういう空気になれば拒まず受け入れた。  そんな生活を送っていたから龍崎と何もない夜が続くと物足りなさに身体が疼く。  けれどいつも一人でしていたようにしても中々イけなくてカイは困り果てた。 (何で……)  最近自分でやっていなかったから自慰の仕方も忘れてしまったのだろうか。  戸惑ったカイは徐に緩く勃起したそれを通り越して股の奥へ手を潜らせる。  ドライはもう勘弁だったからあれ以来やっていない。けれど今ならと唾を飲み込んで、手近にあったハンドクリームを絞り出し後孔に塗りつけた。  結果、カイは失敗した。  あの時はあんなに気持ち良かったのに、苦しいし気持ち悪いだけで快感を得るには程遠い。 (俺下手なんかな……龍崎さんが上手いのかな。いや、まあ上手いんだけど)  龍崎にされた様々な事を思い出して顔が火照る。 (そういえば龍崎さん何でこういう事知ってるんだろう。ゲイ……じゃないよな。結婚してたんだし)  きっと女性の扱いも手馴れているのだろうからその延長か、と無理矢理帰結させて布団に潜り込んだ。

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