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第9話 -2*

「ベッドに行こうか」  耳元で甘く囁かれこくりと頷く。  抱き上げられ広いベッドに下ろされると目尻や首筋に口づけを落とされながら服を剥ぎ取られる。ベルトに掛かった手を思わず止めようとするも、龍崎は優しく大丈夫だからと言って一つ一つ剥いでいく。  自分だけ素っ裸なのも龍崎の視線に晒されるのも気恥ずかしくて顔を背けると、頬や耳の下に口づけが降りくすぐったい。  けれどふと龍崎の動きが止まり不思議に思って顔を少し傾けると、龍崎の指が首の後ろの方に触れた。 「何もないだなんて嘘だったんだね。あいつの痕が残ってる」 「え……? あ、あの時の。で、でもちょっと触られただけで」  弁解するカイに龍崎は優しく微笑む。 「あッ、」  肌を強く吸われ上書きされる。甘く痺れるその微かな痛みにひくりと肩が揺れた。 「カイ君の身体はね、僕が触れる度に少しずつ感度が良くなっているんだよ。気づいてた?」  ぴく、と反応する。龍崎に後ろから包み込まれるように抱き締められ、首筋をぺろりと舐められる。 「元々の素質も勿論あるんだろうけどね。後ろで快感を得るのだって、慣れるのには個人差がある」 「ふぁっ」  そう言いながらきゅっと胸の突起を摘ままれ声が上がった。両方のそれを指先で捏ねるように潰すように刺激を送られ生まれる快感に肌が粟立つ。 「りゅ、龍崎さんやめて。これは、恥ずかしい」 「どうして? カイ君気持ち良いでしょう?」 「だ、駄目なんです。俺は龍崎さんを気持ち良くさせたいのに」  龍崎の手を払うもじんじんとした甘い痺れが後を引く。  じゃあこうしよう、と龍崎は提案する。 「そう、そうやって舌絡めて、吸って。……良いよ、上手だ」 「んっ……ふ、は」  寝そべった龍崎の上に逆になって被さるような形で龍崎の膨れた熱を頬張る。触れた事はあるものの咥えるとなるとその大きさに驚かされる。  けれどカイはこうしている間も失礼にも龍崎に尻を突き付けあろう事かその尻を揉まれているという事態に気が気でない。カイが慣れて来ると、尻の割れ目に龍崎の指が添い後孔を押されて腰が跳ねた。 「りゅ、ざっ、」 「大地って呼んでよ」 「だいち、さん?」  そう、と龍崎が言うと後孔にぬるりとした感触を覚えてカイは飛び上がった。逃げようとする腰を龍崎がしっかりと掴み、舌を這わせじゅるると吸われる。 「や、やめてください! きたな、汚いですから!」 「さっき綺麗にしたじゃない。カイ君も続けて? 一緒に気持ち良くなろうね」  俺はいいですから、という言葉は却下される。  龍崎の熱を咥えるも、龍崎の舌が入り口を擽るものだから集中出来ない。声が出そうになるのを必死で堪えようとしているのに、柔らかくなっていくと龍崎の指が内側を刺激してくる。 「だ、大地さん。お願いですから、ちょっとやめてくれませんか。これじゃ大地さんをイかせられない」 「僕は楽しいよ? でも、じゃあ……次はこっちで気持ち良くしてくれる?」  龍崎はそう言うとぐちゅりとカイの中で指を折り曲げる。  ちり、と快感の端に触れ咽喉が引き攣った。  はい、と小さく零れたその言葉に龍崎は満足そうに微笑む。 「僕もカイ君にはすごく感謝してるんだよ。晃の事も含めて、すごく助かってる。だから、僕にも沢山カイ君を気持ち良くさせてね」  ずるい、と思った。  そう言われてしまえば受け止めざるを得なくなる。  身体中の至る所に口づけられ、時間を掛けて慣らされる。気を抜くともうそれだけで達してしまいそうだった。  とろとろと透明の滴が垂れるカイの熱に龍崎の手が優しく触れる。 「挿れるよ」  みちりと後孔が押し広げられ身体が悲鳴を上げる。生理的な涙が浮かび、シーツが濡れる。  それでも龍崎はカイが出来るだけ苦しくないよう、快感を与えながら少しずつ押し進んでいく。  汗で髪が張り付く。あまりの苦しさで脚が震えた。  けれどカイの身体が龍崎のものを受け入れるのに慣れようとしている間、龍崎は優しくカイの身体を労わり無理に突き動かそうとはしなかった。 「ぁ、あっ、ハ、ぁあ」  そうしてやがて苦痛の声に色が滲む。  ぞくぞくとした快感が少しずつ大きく膨れ上がる。  ドライの時とは別の、けれど堪らない快楽に身を沈めた。  龍崎の肌の熱を全身で感じる心地良さ。  今だけはこの人が自分のものになったかのような恍惚感。 「だ、いちさ」  夢のような朦朧とした意識の中、カイ、と呼ばれたような気がした。 「あ、ぁあっ……」  どくどく、と絶頂を越えて濁った液体が溢れる。  続くように龍崎も達した。 (大地さんのが、俺の中に)  それはとても、幸せな瞬間だった。

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