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   ***  昼休みになり、祥は約束どおり園山と屋上に向かっていた。  園山がそこのドアに手をかけると、ドアノブは引っかかることなく回る。 「うわ、ほんとに鍵かかってないんだ」 「うん。皆ここは開かないって思ってるみたいで、逆に誰も来ないから静かなんだ」  そう言って園山はドアを大きく開ける。    次の瞬間、五月の蒼くて清々しい風が二人を包み込んだ。 「――ッ、園山お前、いつもこんな所で飯食ってたのかよ。すっごい良いとこじゃん!」  二人は今、この学校で誰よりも一番高いところに立っている。  あまりに静かなこの場所で、まるで二人だけの世界に入ってしまったかのような気がした。  祥は屋上の真ん中まで走り、辺りをぐるりと見回す。  そこには、蒼い空が果てしなく続いていた。  胸一杯に爽やかな空気を吸い込んでから、フェンスの隅に腰を下ろした園山の元へ向かう。 「園山、ここ教えてくれてありがとな!」 「うん。本当は誰にも教えたくなかったんだけど……井瀬塚なら、良いかなって思って」 「マジで!? じゃあ俺、屋上のこと誰にも言わない。俺、口は堅いから」 「ありがとう。ここは二人だけの秘密だから」  約束が、秘密になった。  二人だけの秘密だ。それが嬉しくて自然と笑みが零れてしまう。 「どうしたの井瀬塚? 何か、嬉しそうだね」 「何でもねーよ。早く飯食おうぜ」  そう言った祥の声は弾んでいる。   園山は、ようやく二回目の笑顔を見せてくれた。

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