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それからは毎日園山と屋上でお昼を食べるようになった。
園山の(祥に対する)人見知りはすっかり治り、普通に話せるようになっている。
だが、五月ももうすぐ終わってしまう。梅雨に入ったらここに来るのは難しくなるだろう。
「あ、井瀬塚、また購買のパンだけで済ませてる。水泳部なんだから気を付けないといけないんじゃないの?」
「だいじょーぶ。今日はパンだけじゃなくて、おにぎりもあるんだ」
「余計に駄目なんじゃ……」
祥のバランスの悪い昼食をよく心配してくれる園山は、毎日弁当を自分で作ってきている。家も遠いというのに、冷凍食品ばかりでなく栄養面がきちんと考えられたものだ。
「にしても、お前すごいよな。毎日早起きすんの大変じゃない? バスも疲れそうだし」
「六時に起きれば間に合うよ。それに、バスは始発の停留所から乗るから、絶対に座れるんだ」
そう言って園山は卵焼きをつまむ。相変わらず美味しそうだ。
「そういえばさ、井瀬塚っていつも違う人と食べてたよね」
「あぁ、優梨か。筑戸優梨。俺の幼馴染なんだよ」
「毎日俺と食べてて平気?」
「へーきへーき。優梨はそんなことじゃ怒んないし」
優梨とは毎日顔を合わせる上に、付き合いも長いのでお互いの性格は嫌というほど分かる。急に優梨と昼食を共にしなくなったことに関しては何も言ってこない。それは今までの経験上、取るに足らないことだと互いに認識しているからだ。
「でも、あいつ何考えてるか分かんない時があるんだよな。たまに喧嘩だってするし」
「喧嘩するほど仲が良いって言うし、そういう友達は大事にしなきゃ駄目だよ」
「園山には幼馴染とかいないのか?」
「あ、うん……」
すると園山は言葉に詰まって俯いてしまった。
(しまった、地雷だったかな)
仲が良くなったとはいえ、園山はどこか人をあまり深くまで踏み込ませない、見えない線を引いているようだった。
「井瀬塚と筑戸は、いつから一緒なの?」
「保育園の頃からずっと。家族ぐるみの付き合いなんだ」
その代わり、祥のことについてはよく質問をしてくる。
園山については、まだ分からないことの方が多い状態だった。
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