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その日は部活動があったのだが、それが終わった後に紫藤先生に呼び出された。
祥は職員室に足を踏み入れるが、もう夜の七時近いこともあり、残っている先生は多くない。
「失礼しまーす。二年四組の井瀬塚です」
「お、来たか。入っていいぞ」
祥は両手でドアを閉め、紫藤先生の元へ向った。
「井瀬塚、お前最近園山と仲良いよな。上手くいってんのか」
「はい」
「それでヘッドホンの事なんだが、何とかなりそうか?」
「それは、園山が話してくれるのを待とうかと思って」
「俺もできればそうしたいんだが……ほら、中間テストが近いだろ」
「あー、そうですね」
先生の言いたいことは察しがついた。
あと十日もすれば中間テストが始まってしまう。ヘッドホンを付けたままテストは受けられない。できたとしても、カンニングと見なされる恐れがある。
「だから、テストの間だけでもヘッドホン外せって言ってもらえないか。多分俺じゃ聞いてもらえないから」
(あいつ本当に人見知り激しいな。先生とぐらいちゃんと話せよ)
心の中で溜息をつきつつ、今のところ彼とまともに話せるのは自分ぐらいしかいないと自負していた。ならば答えは一つしかないだろう。
「分かりました。言ってみます」
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