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第4話

 無事講義にも間に合い、河川敷のゴミ拾いも決行できた。中岡も「痛みは引いたから僕も頑張るよ。」と一生懸命していた。他の人が頑張っている姿を見るのがとても好きだ。俺も頑張ろうと思えてくる。  中岡を労わるために夕飯に誘った。中岡は顔を上気させ、「行く!」と今までで一番大きい声で返事をした。大衆居酒屋で焼鳥など適当に頼み、俺は20歳になっていたのでビール、中岡は早生まれなのでリンゴジュースを頼んだ。 「ゴミ拾いお疲れ〜。乾杯ー。」 「乾杯…っ!」  カチンとグラスのいい音がする。よく冷えたビールが喉を通って身体に行き渡る。美味い。  俺は最近ハマっているバンドや個人的に行ったボランティアの話などをした。中岡はあまり自分から話をしないが、その分人の話していることにしっかり耳を傾けてくれる奴で、お酒の力もあり俺は饒舌になった。最近のストーカーについても話した。 「俺はもっと悪化するんじゃないかって、まじ怖いのに、時枝達は笑ってさぁ〜。」 「そうなんだね…。」  中岡がとても辛そうな顔をする。中岡がされてるわけじゃないのに、俺の事を考えて、そんな顔をしてくれるとは、薄情な友人の後であったため感動した。 「実は今日家帰るのもちょっと怖い…。」  ぼそりと呟いた。中岡は少し考え込んだ後、「僕で良ければ一緒にお部屋確認しようか?」と提案してくれる。1人で帰りたくなかった俺には願っても無い提案で二つ返事で返した。    お腹いっぱいになり、中岡と一緒に家の前まで来た。俺の部屋は一階で、周りに誰かいないかとひやひやしたが、見かけずホッと息を吐き出す。鞄から鍵を取ろうとして気づいた。 「あ、あれ?」 「…どうしたの?」 「いや…鍵が見当たらなくて…」  鞄に手を入れて探しても見つからないので、玄関前で中身を出した。それでも見つからない。 「ない…。どこで無くしたんだろう…。」  さっきまでいい気分だったのに、酔いが醒めた。変な汗が出てくる。朝に鍵をかけたので、そこまでは確実にあった。今日行った場所は授業のあったL3教室と食堂と空き部屋と河川敷…。 「宮ヶ原君…。」  はっと意識を中岡に向ける。いた事を忘れていた。 「あははっ!俺鍵無くしたみたいで!折角来てくれたのにごめんな!」  俺の鍵をストーカーに取られているかもしれないという考えが頭を占め、笑顔が引きつった。 「全然いいよ。…大丈夫?」  大丈夫じゃない。恐怖で身体が震えた。俺が返事を出来ないでいると中岡が「今日行ったとこ一緒に探しに行こうか。」と言った。  俺が落としただけで見つかればいい。俺もじっと出来なかった。 「そうだな!今日行ったとこちょっと見てこようかな。中岡は手足痛いだろ?家でゆっくり休めよ。」  ぽんぽんと肩を叩いて、どう巡るか頭の中で思考した。一刻も早く見つかって安心したい。走り出そうとして、中岡に腰辺りの服を掴まれた。ぐっと身体が止まる。  「宮ヶ原君顔色悪い…。僕も力になりたいよ。一緒に探そう。」  真摯な態度に泣きそうになった。1人では悪い方向へどんどん考えそうだったから人がいて欲しかった。 「…まじありがと…。」 「ううん。お昼助けてくれたお礼だよ。気にしないで。」  中岡の笑顔で少し気持ちが楽になった。  中岡と一緒に一応俺の部屋を外部から見た。てるてる坊主はまだあり、カーテンがしてあるため中は見えない。他は異常なかった。  時間は22時を過ぎていたので、大学の教室や食堂は閉まっていた。落し物を管理している事務も朝8時半からしか空いてないので確認出来なかった。河川敷は俺がゴミを拾った場所を中心に探したが、暗くてよく見えず、日付けが変わった頃まで探したが結局見つからなかった。 「…学校にあるかもしれないから明日聞いてみるわ。中岡遅くまで付き合ってくれてありがとな。」 「ううん、全然いいよ。学校にあったらいいね。」  がさがさと短い草を踏みながら道路へ上がっていく。  「宮ヶ原君、今日僕の家に泊まる…?」  後ろから上擦った声が聞こえる。  「いいの?すごい助かるけど。」朝までどうしようか、よかったら中岡んちに泊めて貰いたいと思っていたので有難い申入れだった。 「いいよ。散らかってるけど、大目に見てね。」恥ずかしそうに口を隠しながら話している。 「全然いいよ。まじありがと。」  今回の出来事で俺の中の中岡という友達の存在が大きくなった。友達の中の1人だったのが、今後も一緒に連んでいたいと思える存在に。

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