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放課後お菓子と幼馴染の事情③

「かずくんに上げるならいらないのかなと」  かずくんとは和希のことである。どうやら和希がいらなくなったから、もう食べる人がいないようだし食べていいか? という意味らしい。 「だからといって、お前にやるつもりはない」 「鬼っ」 「なるほど。鬼からの分け前はもういらないよな?」 「うそです、しょうぐんさまおだいかんさま。このあわれなひゃくしょうにあいのてをおねがいしますだぁぁぁぁ!」  棒読みで言われてもまったく感銘を受けないんだが。  ナイフを取り上げると、自分の分のケーキを切り分ける。空になった皿に載せてやると、かっちゃんは口元に手を当てて、キラキラした瞳を向けてきた。乙女か。 「かっちゃん、実はオレ、ずっと前から言いたいことがあったんだ」 「言わなくていいから、とっとと食え」 「いやぁ、言わせてぇ!!」 「ええぃ、うざい、とっととくたばれ!」  どうせ愛してるとかロクでもないことだろう。聞きたくないわっ! 「うるさい! 宿題集中出来ないから静かにして!!」  二階からの突っ込みに、俺とかっちゃんは思わず身をすくませるとその場で正座した。昔はこんな子じゃなかったんだが。やはり反抗期か。 「かっちゃんかっちゃん、中一で反抗期はまだないと思うし、ただいま絶賛反抗期世代真っ只中なのって、むしろオレらじゃね?」  冗談で言ってみただけなのに、マジで返されて。それも正論で。この馬鹿に。  俺はかっちゃんの皿からつかみ取ったケーキを一口で頬張ると、そのままもぐもぐと飲み下した。 「オレのケーキがぁぁぁ!」  うるさい元々俺のだ。  しばらくうなだれていた馬鹿は、恨みがましくフォークをくわえてペロペロなめている。行儀が悪い。  いつからこんな食欲魔人になったのかと、色々思い返してみたものの、仲直りしたきっかけ自体、親父のケーキだったのを思い出す。  ようするに元から。  思わずこいつの頬をつねりたくなっても、しかたないと思う。 「いたたたたっ」 「来週はイチゴのショートケーキにしようかと思うんだが」  頬を押さえるかっちゃんの耳元に、ぽそっと呟いてやる。と、反応するように、ぴゃっと目に見えないはずの、わんこの耳が立つのが見えた。  こいつが犬だとしたらなんだろう。ポメラニアンか。  キャンキャン吠えるわんこを思い浮かべて、そのままじゃないかとげっそりした。  引き出した椅子に腰かけると、テーブルに頬杖をつく。まだ残っている俺のケーキを恨めしそうに見ている相手に、うなずいて許可を出した。ぶんぶん振られる尻尾まで見える。  まぁ、悪いやつではないんだよな。あの言動さえなければ。

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