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第9話 予想外。
何故よりによって、此の映画をチョイスしたのか…
てっきり、友情を描いた作品だと思っていたのに、蓋を開けてみれば、主人公がノンケの親友に友達以上の想いを抱いてしまうという、BがLする物語ではないか。
このタイミングで此れは無いだろ。
役者が陸斗に似ているからと、あらすじをろくに見もしないで購入してしまった自分を、ぶん殴ってやりたい。
あ、、主人公が親友にキスしちゃったよ。しかもディープなやつ。普通、告白が先だろ?手順守れよ。ちょっ、された方も素直に受け入れてんじゃねーよ。セックスのシーンにでも突入されたら目も当てられん。
陸斗とベッドの上で座って観ているんだぞ。 彼の髪から自分と同じシャンプーの香りがして、何だかこそばゆい。
うぅ…このままだと反応してしまいそうだ。まずい。非常にまずいぞ。
別のDVDに変えちまうか。うん。其れが良い。
『陸斗、別の映画観ても良いか?』
「何で?」
『何でって…面白く無いかなって思ってさ。』
「そんな事無いよ。二人がどうなるのか気になる。」
俺は、自分の股間が気になる。
『じゃあ…最後まで観るか?』
「うん。」
浮かしかけていた腰を下ろす他なく、心の中で盛大な溜息を吐いた。
「ちゅん太と逢坂もキスしたのかな。」
ぽつりと呟いた言葉に心臓が跳ねる。陸斗の方から、ちゅん太の話題を振ってくるとは思わなかった。
「大樹も、ちゅん太から聞いたんだろ?」
『ああ、帰り途中に呼び止められて…』
「そっか。」
『あの二人が付き合うなんて、意外だよな。』
「本当に良いのかな…」
『駄目な理由でも有るのか?』
「そうじゃないけど…」
『ちゅん太が決めた事だろ。』
慰めてやりたいのに、俺の気持ちに気付かないで、他の男を想っている陸斗に苛立ってしまう。
「けど、恋人になるって事は、キス以上も…」
『するだろうな。』
「だよね…」
『俺達もさ…してみる?』
「何を?」
『セックス。』
今、陸斗がどんな表情をしているのか確かめる勇気が出ない。画面に視線を向けたまま、もう一度訊ねる。
『陸斗、俺とセックスしてみる?』
「大樹…好きな人とかいないの?」
『いるよ。いるけど…其の人は別の人を好きだから。』
「そっか…俺と同じだな。」
今の言葉で俺の失恋が確定。
『お前、ちゅん太の事が好きなんだよな?』
「えっ?!」
酷く驚いた顔してる。バレていないと思ってたんだろうな。
『俺が彼奴の代わりになってやるよ。顔を見てするのが嫌なら、目隠しをすれば良いだろ?』
悔しさの余り、馬鹿な台詞を口にした。
「俺…男だけど、大樹は俺の事抱けるの?」
てっきり断られると思っていた。何、下らない冗談を言ってんだよって笑い飛ばされると思っていたのに…
予想外の展開に鼓動が激しくなる。
陸斗の為を思うなら、やっぱり今の無し!冗談だよ。って、そう言えば良い。
だけど、言えない。言いたくない。
多分、自分に抱かれる陸斗を想像して自慰に耽ったあの日から、俺の理性は崩れ始めていたんだ…
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