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 財布や鍵、定期券程度じゃもう驚かない。大物(質量的に)でいうと、朝顔の鉢植え。めずらしいものでいうと、書道コンクールで貰った賞状(大切なもののはずなのに陽翔はケロッとしていて、賞を狙っていた蓮は少し腹が立った)  困ったものでいうと、リコーダー。それを使ってちゃんばらごっこに夢中になって、あれっと思ったときにはなくなっていた。しかもタイミングの悪いことに、次の日はリコーダーのテストだった(ちゃんばらをするためではなく、練習をするために持ち帰っていたはずだった)  遊びに誘ったのは蓮の方だったから、陽翔だけを責めるわけにもいかず、ちょっと気まずかった。  たいていのことはなんくるないさー(沖縄出身じゃないが)という風に流す陽翔が、めずらしく本気で困っていて、「どうしよう」とぼやくたび、「蓮、どうにかしてよ」と迫られているような感じがした。だからおもむろに、「あっ」と陽翔がパン、と手を叩き、 「テストのときだけでいいから、蓮の貸して」  と、きらきらした目で見てきたとき……  冷静な判断はとてもできなかった。

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