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 唇と唇がくっつくより先に、鼻か、頬か、性感なんてこれっぽっちも感じない肌と肌とがくっついた気がしたけれど、強引に軌道修正された。入り込んでくる舌。舌が入ってきているのは口の中だというのに、まだ入れられて数秒も経っていないというのに、それが別の場所に入り込んでくるところを想像してしまって、キスとは全然無関係な、さわられてもいないところが震えてしまう。  自分が切り上げないと、この行為は終わらない。  そう悟って、慌てて胸を突いた。 「馬鹿……っ! こんなところで……誰かに見られたら……っ」 「大丈夫、傘が隠してくれるだろ」 「思いっきし透明じゃねーか!」 「あ、そっか、そうだな。はは」  手の甲で唇を拭う。ふれられていたときより、離れたときの方がより感触をリアルに感じてしまう。  一旦離れると、それ以上の距離に近づくことがなかなかできなかった。  ……あの傘だったら、隠れたのかもしれない。直径128センチメートルの、あの傘なら。

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