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 用具倉庫の裏。庇の下に身を寄せ合うようにしながら、さっきのぐだぐだをやり直すようにキスをした。  舌の上を、歯の裏を、舐められると確かに気持ちいい。ぞくぞくする。でもそれよりも、唇が離れる一瞬にぞくぞくしていることに気づく。次はもっと奥深くまで蹂躙される……その予感に、ぞくぞくする。ふきかけられる息が、身体の奥にともった炎を吹き消したと思ったら、今度は逆にともしたりする。  一体いつの間に、こういったことを覚えたんだろう。お互い。  くちづけられると乳首が、乳首をいじられると前が、前をいじられると後ろの穴が、せかすように疼き出す。さわられている場所を素直に感じる、ということができなくなっている自分に笑う。  バラバラバラ、と、庇に叩きつける雨の音。倉庫の向こうにはグラウンドが広がっているけれど、雨だから誰もいない。  ずっと雨だったらいいのに。  ずっと誰もいなかったらいいのに。自分たち以外、誰もいない世界だったらいいのに。  あの傘の中にいたとき、確かに自分たちは、世界でふたりきりだった。大人たちからはたぶん、頭隠して尻隠さずだと、微笑ましい目で見られていたに違いない。どれだけ秘密基地と言い張っても、ただの傘。けれどあのとき、あの中でしていたことは、他の誰にも知られるはずがないと信じていた。外の雑音も何も、聞こえなかった。永遠にあの中にいられると思ったし、陽翔とだったら、いたかった。  陽翔の背中に手を回すと、じっとりと冷たかった。庇からはみ出してしまっていたらしい。抱きしめながら、傘を差し掛けてやりたい、と、ふと思う。突っ込まれて、揺さぶられながら傘を差す……。想像すると笑えてきて、それを隠すために陽翔の肩に顔をうずめる。でもそうだ。思い返せば、自分の方から陽翔に傘を差し掛けたことはなかった。  ぐっと引き寄せると、下の刺激をねだっていると勘違いされてしまった。バラバラバラ、と激しい雨音の中、ジッパーを下ろす音はやたら大きく響いた。  汗まみれでも、身体が尋常じゃなく火照っていても、いやらしい液体でびしょびしょに濡れていても、全部雨のせいだと言い訳できるような気がした。べたべたして、不快で、早く過ぎ去ってほしい……そんな季節の中、快いことをしている。正反対に、これ以上ないくらい、快いことを。

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