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1-2 低空飛行の恋愛運
一年前まで働いていた花屋さんは、なかなか定職に就けないΩのための推進雇用枠でのパート採用だったけど。
力仕事も頑張って、アレンジメントフラワーの勉強もしたりして、自分の仕事で直接お客さんに喜んでもらえるから楽しかったんだよ。
お客さんの中には、αの人もいてね。
ホテルのテナントだったから、おかしな人も来ないし、どちらかと言えば身なりもきちんとした人が多かった。
番が欲しい僕には、もってこいの職場!
なんというか・・・僕はずっとずっと番が欲しくて。
将来の夢は、家事手伝い。
料理も洗濯も掃除もね。
いつか現れる僕のαに尽くすために、小学生の頃から頑張って母親から教えてもらっていたんだ。
それなのに・・・それまで僕の周りに現れたαはいろいろとおかしな人が多くて。
ヒート中のΩを抱いてみたい、とか。
ーこの人には、一回目のヒートが終わったらフラれた。
お人形さんみたに飾って傍に置いておきたい、とか。
ーこの人には、お披露目会に出されて売られそうになった。
部屋に閉じ込めたい、とか。
ーこの人は、トイレにまでついて来ようとするから引いた。
文字通り食べてしまいたい、とか。
ーこの人には、手紙を貰った時点で辞退した。
ほかにもなんか、ちょっとアレな人が多くて。
中には、βなのにαだって嘘をつく人もいたりで恋愛運が底無しに悪い。
僕の見た目は、同年代のβと並んで明らかにΩとわかるくらいに華奢で顔も可愛い部類に入るらしい。
そのせいか、Ωを標的にした組織に誘拐されそうになったこともあったりで。
安心して働けて、しかも安全そうなαと出会う職場はとっても貴重。
いつ、誰の目に留まるかわからないし、常に緊張しながら働いていたんだ。
毎週決まった時間に買いに来る人の中には、俺と同じ気持ちで番を前提に付き合ってくださいって言ってくれるαもいてね。
お付き合いしてみようかなって思った矢先に、まさかの店長からストーカー被害にあって。
ヒートの誘発剤を使おうとしたところを現行犯逮捕・・・
でも、悪いことばかりじゃなくてね。
Ωの性被害専門のカウンセラーの人が、良かったらって紹介してくれたのがここ『ゆらファーム』
番よりも、まずは仕事をちゃんとして、親を安心させなきゃって。
そう思って面接に来たら・・・一目ぼれしちゃったんだよねぇ。
初めて出会ったあの日のことを思い出し、自然とため息が出てしまう。
優しい笑顔から溢れる包容力。
一緒の働いてからも、常に気を配って声をかけてくれて。
仕事でわからないことは、先回りして教えてくれる気遣いまで完璧で・・・
「柳原さーん、そろそろ帰れそう?」
ノック三回の後、学生アルバイトと思い込んでいた・・・あの人の子ども。
萩野 青嵐君が扉から顔だけ出して声をかけてくれた。
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