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第3話

それから俺はMirageで 円さんにバイトとして雇われ今に至る。 初めは慣れないことも多く 大変な部分もあったが今では… 「ねぇねぇ雛くんってさー恋人いるのー?」 「いませんよ。」 「えー!じゃあ今フリーなんだ! アタシが恋人に立候補しちゃおうかな〜」 「優菜ちゃんが雛くんの恋人になったら 雛くんが仕事に来なくなりそうだから 僕は心配だなぁ…」 なんて円さんと常連客の優菜ちゃんと 会話しながら仕事をこなせるようになった。 あの日から5年。 もしあの時 円さんに声をかけられていなかったら… そう思うと円さんには頭が上がらない。 あれから円さんは 病院に一緒に行ってくれたりはするものの 俺の過去には一切触れないでいてくれた。 それが俺にはとても有難い。 円さんになら話してもいいとも思うのだが まだ勇気がでないのだ。 でもいつか機会があったら話そう…。 そう思っていたある日の事だった。 「雛くん、お客さんもいないし 今日はもうお店閉めちゃおうか。」 と円さんに言われ お店を閉めようとしていた時 「まだ開いてますか…?」 そう言って1人の男の人がお店に入ってきた。 円さんが 「はい、まだ開いていますよ。」 と言うとその人はカウンターに座り 「ジントニックをお願いします。」 って慣れたように注文して その人が顔を上げた瞬間、目が合った。 そしてその人の顔がはっきりと見えた事で 凄く綺麗な顔立ちをしていることに気づいた。 白く決め細やかな肌。 少し憂いを帯びたような瞳。 柔らかそうな唇。 特に海のような澄んだ青と 少しグレーの混じったような瞳が凄く綺麗だ。 それに白金髪のさらさらな髪も その人によく似合っている。 俺は無意識にその人を凝視していたようで 「雛くん、 お客様が綺麗な方だからって見すぎだよー」 そう円さんに言われ 「す、すみませんっ…」 と俺が謝ると 「ふふ、いいよ。 でも雛くん…って呼んでもいいのかな…? 雛くんみたいな可愛い人に見つめられると なんだか照れちゃうなぁ…。」 なんて言って少し顔を赤くする。 その顔を見てその人の方が 俺より可愛いし!って思ったのは 俺だけの秘密。

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