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それでもやってくる日常《1》
「おじさん、何処いくんだよ?」
窓の外を軽快に流れていく見知らぬ街並みに、俺は内心焦っていた。
引っ越しの為に車に乗せられたが、行き先が予想と違っていたからだ。
車が進むにつれ、俺の中で芽生えた不安は徐々に大きくなり、慌てて運転席の秋人おじさんに詰め寄る。
てっきりこれからは、おじさんの家に厄介になるのかと思っていたからだ。
秋人おじさんは母さんの古い友人で、身寄りの無い俺達親子をよく助けてくれていた。
おじさんの家にはガキの頃からよく泊まっていたし、母さんが入院する度に、俺はこの秋人おじさんの家に預けられていた。
だから、おじさんに引っ越しの準備をしろと言われた時、おじさんの家で暮らすのだと疑わなかった。
引っ越しと言っても、俺の荷物なんてリュック一個分にも満たない。
引っ越しの準備は五分もあれば充分だった。
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