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《7》
「手、離せよ…」
「………くっ」
言われて、手を離す。
「フンッ、胸糞わりぃ」
そう吐き捨てると、良次は俺を残して何処かの廊下へと消えて行った。
一人取り残された俺は、案内された部屋をぼんやりと見渡す。
古い建物なのに、改装されているのか部屋はフローリングで、この部屋だけで自分が住んでいたアパートの部屋と同じ位の広さはある。
家具も一切無い部屋は、余計に広く感じた。
リュックを下ろして、中を広げる。
自分の持ち物なんて、数える程しかない。
歯ブラシ。
制服。
Tシャツとズボンと替えの下着が1枚ずつ。
母さんと共用で使っていたクシ。
母さんの形見の指輪が入った箱。
母さんと二人で映った写真が数枚。
それと、
ボロボロに汚れてくすんだ、クマのぬいぐるみ。
このぬいぐるみは、子供の頃からの宝物だ。
厳つい自分には似合わないのは重々承知しているけど、これが無いと昔から眠れない。
母さんに貰った大切なぬいぐるみだった。
それを抱き締めて蹲る。
本当に、ここで今日から暮らすのか?
あの、良次という奴とはうまくやっていけそうもない。
だけど、自分にはもう帰る場所なんて何処にも無いんだ。
そう思うと、絶望に酷く泣きたくなった。
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