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《3》
「そういえば、小野部は教科書がまだ無かったな」
別に教科書なんて、あっても無くても読まないから変わらない。
だから、無くても大丈夫と言おうとした時だった。
「僕の教科書を一緒に見て貰うので、大丈夫です」
良次の言葉に、勢いよく良次の方を見る。
良次はと言えば、教師に向かって一見人の好さそうな笑顔を向ける。
昨日の事さえ無ければ、本当に非の打ちどころのない優しい美少年に見える。
こいつ、マジか?
「じゃあ、小野部の教科書が届くまでの間は、大和に見せてもらいなさい。大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
俺は全然大丈夫じゃない。
何が悲しくて、こんな奴に教科書を見せて貰わなきゃいけないのか。
渋々机をくっつけると、先程の青少年ぶりが嘘の様に、もう既に良次の顔が面倒臭そうな物に変わっていて腹が立つ。
「この、猫被りが…」
あまりにも腹立たしいので、良次にだけ聞こえる声で毒づく。
そうすれば、良次は顔色一つ変えずに
「単細胞馬鹿」
と俺にだけ聞こえる声で呟いて、余計に腹が立っただけだった。
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