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《7》

「お前が準備してる間、掃除してて、あんまり汚いからゴミかと思って捨てた」 そう言い放った良次の言葉に、目の前が真っ暗になった。 「な、何て事すんだよ!?」 思わず良次に掴み掛かる。 「わっ、何だよ…!?」 「あ、あれは大事なもんで、あれが無いと…!」 「うるっせぇな………、汚ねぇクマのぬいぐるみ一つでぎゃあぎゃあ言いやがって、お前オカマかよ!あんなボロボロなんだから、ゴミかと思うだろぉがよ!」 カッとなって殴りそうになる。 だけど、見るからに喧嘩慣れしてなさそうな良次を殴る事なんて出来ない。 良次から力無く手を離すと、良次が舌打ちをする。 「ちっ、…確認しねぇで捨てたりして悪かったよ。新しいの買って弁償すりゃ良いだろう?」 「あ…、あれじゃないとだめなんだよっ!!くそっ!もういいっ!!」 リビングから一気に階段を駆け上がって、部屋に戻った。 あのクマのぬいぐるみが、どんなに大事なものか、いくら説明したって良次には理解して貰えるとは到底思えない。 実は良い奴かもとか一瞬でも思った俺が馬鹿だった。 唯々悲しくて、 俺は、昨日の様に蹲った。

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