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大和良次の秘密《1》

朝、目が覚めると良次はもう既に居なかった。 眠い目を擦りながら起き上がると、枕元に紙切れが落ちていた。 その紙切れを拾い上げると、綺麗な字で出掛ける旨が書いてある。 その良次のメモを見て、そういえば今日は日曜日だったなと思う。 引っ越してきた町は、自分が住んでいた町からそれ程遠い訳では無いけれど、来たのは初めてだった。 土地勘も何も無いから、家の周りに何があるのかも良次に教えて貰った場所以外は分からない。 俺はする事も無いし、外へ散策に出掛ける事にした。 適当にコンビニで飯を買って、朝食を済ませて、俺は学校とは別の方向へと向かう。 路地を曲がったり適当に進んで行くと、何だかもっと進みたい衝動に駆られ、どんどん先へと散策の歩を進める。 暫く行くと橋があって、その下には大きな川が流れていた。 何だか初めて来た町の筈なのに、懐かしい様な気がする。 そんな筈は無いのにと首を捻る。 これが、所謂デジャブというやつだろうか。 まぁ、閑静な住宅街ではあるけれど、よくある光景だから、そう感じるのかもしれない。 ふと、良次の事を思い出す。 昨日は何だかんだ文句を言いながらも案内をしてくれたり、部屋に入れてくれたりと、案外良次は良い奴なのかもしれない。 これなら、仲良く…とまでは無理かもしれないけれど、何とか一緒の家で暮らしていけるかもと考えながら歩いていた。 ふと我に返り、周りを見渡す。 「あ、あれ…?」 そういえば、自分の今いる場所はどの辺りなのだろう? そこまで考えて、ようやく自分が道に迷った事に気がついた。 「やべっ、ここ何処だ!?」 慌てて見渡すが、さっぱり自分の位置が分からない。 散々歩き回って辿り着いたのは、大きな公園だった。

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