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《4》
多分、顔は見られていなかったと思う。
このまま逃げ切れば、さっきの出来事は見なかった事に出来る。
良次が不良グループのリーダーだろうが、どうでも良かったし、不良グループと問題を起こすのは、今は何としても避けたかった。
橋に差し掛かった時だった。
「え………?」
川の傍で小さな女の子が泣いている。
必死に何かを叫んでいた。
その先には…。
「マジ…かよっ…!?」
犬が川の中央で溺れている。
何もこんなタイミングでこんな場面に出くわす事はないだろう。
このままだと、良次達のグループに追いつかれちまう。
助けなければと、逃げなければという選択肢が頭の中を巡る。
だけど、迷っている間にも、今にも女の子は川に入りそうだった。
「あーっっ!くそっっ!!」
橋の下へと続く土手を駆け降りる。
「絶対、川に入るなよ!いいな!」
女の子に声を掛けて、俺は川に飛び込んだ。
水を掻き分けて、中央へと向かう。
結構、深いな…。
正直、泳ぎには自信が無い。
だけど、足がつくから大丈夫だ。
そう思って、奥へと進んだ時だった。
ガクリと体が沈む。
「!?」
見上げても見えない空に、水の中に沈んでいるのだという事に気付いた。
水面が、揺らめいているのが、やけに長い時間に感じた。
そこで、意識が途絶えた。
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