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脅される《1》
「お前…、どこまで見てた…?」
公園で良次達が話していた事を言っているのだと、ちょっとだけ焦る。
「い、いや、どこまでってか…。別に…、俺はお前がどっかのグループのヘッドだろうが、関係ねぇし…」
鋭い視線で睨みつけてくる良次に、困惑する。
学校で優等生なんてやってるもんだから、知られるとマズイのかもしれない。
だけど、良次に二面性があるのは最初から分かっている事だったし。
確かに驚きはしたけれど、そこまで神経質にならなくてもと思う。
安心させようとして、言った言葉だった。
だけど、その言葉に良次の目の色が変わった。
本能的に何だかまずいと思い、無意識に身体が逃げようと動く。
瞬間、強い力でベッドに押し付けられた。
「いっ!?」
力で負ける筈が無い。
なのに、良次を押し退ける事が出来ない。
さっき溺れたせいか、体に力がうまく入らなかった。
「聞いてた訳だ、全部」
「た、たまたまだ…!盗み聞くつもりなんか無くて…!」
「そんな事はどっちでも良い…」
「りょ、良次…?」
「お前が誰かに喋らねぇとも限らねぇしな」
「しゃ、喋らねーよ!!」
そんな事を誰かにチクるつもりなんて毛頭無い。
だけど、良次は納得しない様だった。
「信用できねぇな」
「なっ………、んな事言われても…」
「お前、公園で逃げたよな?」
「そ、それは…」
咄嗟で思わず逃げてしまった事が、どうやらまずかったらしい。
「コソコソ聞き耳立てやがって。お前が、他のグループの諜報員ともかぎらねぇしな」
「ちょ、ちょうほういん…?」
聞き慣れない言葉に聞き返すが、無視される。
「ああ…、お前の弱みを握れば良いのか」
座った目で見据えられて、何だかやばいと思った。
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