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《3》
「利久は、引っ越し先での生活には慣れた?」
勇介の問いかけに、俺は言葉に詰まる。
「あ…、まぁ………」
「その感じだと、あんま上手く行ってないみたいだな」
「う…」
歯切れの悪い返事に勇介が眉を下げて笑う。
勇介には、取り繕ってもすぐにバレてしまう。
「まぁ、俺みたいなのは、何処行っても浮いてるからな…」
「利久が本当は優しくて良い奴だって事、俺は知ってるよ」
「あ、改めて何だよ…。恥ずかしいだろ…」
勇介が眩しそうに目を細めて笑う。
その笑顔に、何度も励まされてきた。
「それに可愛い」
「あ、あのなぁ~!」
勇介は、たまにそんな冗談を言ってくる。
こんな図体のデカくて目つきの悪い野郎を捕まえて、可愛いなんて冗談は全く笑えない。
自分で言っていて悲しくなるが…。
俺なんかより、当の勇介の方がよっぽど可愛いと思う。
逆にそんな勇介が、俺みたいなのを可愛いなんて言うのが面白いって事だろうか?
勇介とは笑いのツボも一緒だと思っているけど、この手の冗談はどうも苦手だ…。
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