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《7》
家に着くまで、終始お互いに無言だった。
良次が鍵を開けて、中に入るのに続いて、俺も家の中へと入る。
この数日、すぐにお互いにそれぞれ自分の部屋に戻っていた。
だから、いつもの通りに部屋へ戻ろうと思って階段を登ろうとした時だった。
「随分楽しそうだったな」
予想外の言葉に、俺は立ち止まった。
だから、先程勇介と話していた事を言っているのだと気付くまでに一瞬間があった。
「あ、ああ、幼なじみで親友なんだ…。会いに来てくれたみたいで…」
「お前、あいつと居る時は笑うんだな」
「………え?」
気がついた時には、壁際に追い詰められていた。
まずいと思って、押し退けようとするより先に身体を触られる。
ここ三日、何の接触も無かったから完全に油断していた。
「よせっ!!」
「お前が拒否出来る立場じゃねぇだろ。何回も同じ事言わせんなよ」
「っ!」
良次の手が、大腿部を撫でる。
また、あんな惨めな思いをするのか?
脅されて、嫌がらせで体を触られて、恥ずかしい思いをするのだろうか?
この家に居る間。
何をされても、我慢しなければならないのだろうか?
もう、限界だった。
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