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《4》
聞き間違いかと思って、瞬きを繰り返せば、隣りに良次が座る。
「最初は…、確かにお前の事を良くは思っていなかったし、面倒だと思ってた」
やっぱり思ってたんじゃねぇか。
そう心の中でツッコむけれど、我慢して続く良次の言葉を待つ。
「馬鹿だし、鈍臭いし、何で俺がこんな奴の面倒を見なきゃならないんだって…」
「お前…、それよく本人に向かって言えたな」
良次の言葉にヒクヒクとコメカミがひくつく。
「だけど…、俺が嫌みを言っても、礼を言ったり、素直に頷いてるのを見て思ったんだ」
「え…?」
「ああ、こいつ、本当に馬鹿なんだなって」
「……テメェ、喧嘩売ってんのか?」
良次の失礼な言葉の数々に、そろそろ手が出そうだった。
「だから、こいつ一人で大丈夫なのか?って、気になりだしたんだ」
真っ直ぐに見つめられて、不愉快な事を言われているのに思わずドキリと心臓が跳ねる。
それも、きっと良次の顔が整いすぎてるのが悪い。
「おまけに、自分は泳げないのに犬を助ける為に川に飛び込むどうしようもないお人好しで…、それに…」
一呼吸置いて、良次が再び口を開いた。
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