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《6》*
俺は、覚悟を決めて、良次の背中に腕を回した。
「利久…?」
「痛いのは…ちょっとなら、我慢出来る…」
「え…?」
痛みは喧嘩で慣れているし、耐えられると思った。
「良い…。お前の好きにして、良い…」
精一杯、恥ずかしさや恐怖を押さえ込んで、そう言った。
その瞬間。
良次が、幸せそうに笑った。
それを、何て綺麗なんだろうと思った。
「優しくする…」
良次がベット脇のサイドテーブルの引き出しから何かを取り出す。
「アナル用じゃないけど、無いよりは大分良いと思うから」
「な、何だよ、ソレ…」
「ローションだよ。濡れてないと入らないから」
何故そんなものが常備されているのか若干パニックになっている間に、良次は慣れた手つきで容器の蓋を開ける。
そこから液体を垂らすと、それを手に取り俺の後ろにゆっくりと指を挿入した。
「ヒッ…ィ…」
ローションの冷たさと、未知の感覚に思わず悲鳴を漏らす。
ヌルヌルとした液体のせいで、良次の指は驚く程簡単に飲み込まれていく。
案外抵抗も無く、すんなりと入っていく指に余計に恐怖する。
予想していた痛みは無い代わりに、物凄い異物感に襲われた。
くるくると中を掻き回されて、苦しさが増す。
多分、指を増やされた。
「や…、りょ…」
「大丈夫?苦しい?」
心配そうに、良次が顔を覗き込む。
駄目だ…。
そんな顔しないで欲しい。
「う…るせぇ、く…、大丈夫…だから、掛かって…来い」
「喧嘩じゃねぇんだから…」
俺の必死の強がりに、良次が苦笑いした。
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