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陽だまり《1》

暖かい。 久しぶりに、安心して眠ったんだと思う。 誰かに抱き締めて貰うのなんて、子供の頃に母さんにして貰って以来だった。 微睡みの中から、ゆっくり意識が浮上する。 目蓋を上げると、良次がベット横の椅子で本を読んでいた。 相変わらず、嘘みたいに綺麗な顔をしている。 視線が離せず、その横顔を見つめていると、不意に良次が俺が起きた事に気づく。 「目、醒めた…?」 「ん…、りょ…じ…」 名前を呼ぼうとして、上手く声にならずに驚く。 声が掠れている。 昨日、散々喘いだ所為で声が枯れているんだ。 そこに思い至ると、昨日の夜の事が一気に思い出されて、急に恥ずかしくなる。 「大丈夫か?まだ寝てて良いぜ」 まだ裸で布団に包まっている自分とは違い、良次は既に服を着ていて、髪もセットしていた。 時計に目をやれば、もう既に時間は15時を過ぎていて飛び起きる。 完全に寝坊した。 「いや、起きる…!」 慌ててベットから出ようとベットから足を下ろす。 「わっ」 「利久!?」 けれど、ベットから降りようとして、そのまま床に座り込む。 「あ、あれ…?」 下半身に全く力が入らず、俺は呆然と動けずにいた。

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