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《3》

「…風呂、入りたい…」 身体は怠いし、思うように動かない。 だけど、昨日の名残で身体がベタついて、一刻も早くそれを洗い流したかった。 「ほら」 「?」 俺の前に背を向けて、おもむろにしゃがみ込んだ良次に、首を傾げる。 「流石に自分よりデカい男をお姫様抱っこで階段降りられる程、屈強じゃないからな。負ぶってやるから、乗れよ」 良次の言葉にギョッとして、思いきり首を横に振る。 「い、いいっ、俺…、重いからっ…!」 「これでも男一人位はおぶって運べる」 「俺が恥ずかしい…っ」 「恥ずかしがってんの、可愛いよ」 「お前っ………趣味っ、悪すぎっ…!」 「ほら」 「く…」 どちらにしろ、手を借りなければ、動く事もままならない。 俺は下着を履きシャツだけ羽織って、渋々良次の肩に掴まった。 俺を背に抱えて、良次が立ち上がる。 思っていたよりも軽々と良次は立ち上がり、驚く。 細身なのに、以外と力があるのだと知った。 「声も枯れて、歩けなくて、水場に行きたいなんて」 階段を降りながら、良次が続ける。 「一夜にして、まるで人魚姫だな」 死にたい。 今、現在進行形で人魚姫に例えられている自身が滑稽過ぎて辛い。 こんな図体のデカい野郎に向かって、姫の形容は、最早良次の頭が心配になる。 もしかしたら、昨日突き飛ばした時に頭でも打ったのでは無いだろうか…? 何が楽しいのか笑っている良次に、何だか無性に腹が立った。

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