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《4》
良次は俺を背負ったまま、脱衣所を通り抜け、風呂場へと歩を進める。
その時点で、何かおかしいと思い始めていた。
てっきり、送ってくれるのは脱衣所までかと思っていた。
何だか妙な胸騒ぎがして、良次の肩を軽く叩く。
「も、もう降ろせよ…」
不安を感じながら良次に話しかける。
「りょ、良次…!?」
俺をバスタブの縁に座らせると、良次は俺が羽織っていたシャツを脱がせていく。
そして、その手際の良い手は、下着にまで辿り着く。
「ちょ…、な、何!?」
「歩けないのに、一人で風呂入るつもりだったのかよ?」
「ゃっ…」
脱がせようとして、俺の下着をずらす良次に慌てる。
「も、もう大丈夫だから、出てってくれ…!」
「腰浮かして…」
「り、良次ぃ…」
声は完全に泣き声で、情けない。
「昨日だって、この間だって、裸見られてるのに、恥ずかしいの?」
「は…、恥ずかしい…に、決まってるっ」
羞恥に震えながら言えば、何故か急に抱き締められる。
「どうしてこんなに可愛いんだろう…」
堪らないといった様子で、強く抱き締められて困り果てる。
何故、自分なんかにそんな風に思うのか、理解出来ない。
だけど、良次の好意が何ともいえず擽ったかった。
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