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《3》

暫くの間、良次が部屋のドアをノックしていたけれど、無視を決め込んだ。 彼女がいるのに、自分にあんな事をして、好きだと囁く良次を理解出来なかったし、したいとも思えない。 ただ…。 何故だか酷く悲しくて、涙が止まらなかった。 さっきの女の子。 まるで、モデルの様にスタイルが良くて、美人だった。 もしかしたら、実際にそうなのかもしれない。 良次と凄くお似合いだった。 ふと気づけば、外はもうすっかり暗くなっていた。 電気のスイッチを入れる。 顔を上げると、窓ガラスに自分の姿が映っていた。 目つきの悪い、金髪で大柄な自分の姿。 どこからどう見ても男で、ガラの悪いヤンキーだ。 格好良い良次にはとてもじゃ無いけれど釣り合わない。 それに。 さっきの話からして、良次には他にも彼女がいるみたいだった。 きっと、良次にすれば、その大勢の中の一人。 いや。 女の子じゃない分、それ以下だと思う。 きっと、からかって遊んでいただけだろう。 何で、信じたりしたんだろう。 からかわれているだけだって、ちょっと考えれば分かるじゃないか。 良次みたいに格好良くて、女の子にモテる奴が、最初から自分を本気で好きになる訳が無かったんだ。 それなのに、 勝手に信じて。 良次の事を、 好きになれたらなんて…。 ほんと、もう、最悪だ…。

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