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《2》
「い、いいよ…」
「だーめだって、少しは食わないと!」
俺は優の押しに負けて、ゼリー状の栄養補助食品を一つ手にする。
「じゃ、じゃあ、これだけ貰うよ。えっと、幾らだ?」
財布を取り出そうと自分の鞄に手を伸ばすと、それを止められる。
「金なんか取らないって!」
「いや、でも…」
「小野部って見かけによらず真面目なのな。お近づきの印って事で受け取ってよ」
「あ、ありがとう…」
「はい、これもちゃんと食ってよ。倒れたら大変だよ」
言われるがままに、大量の食料を押し付けられる。
なんか、コイツ。
見た目はチャラいけど、案外良い奴なのかもしれない。
「お前、俺が恐くねぇの?」
「小野部が?」
「現に、転校してきてから、初なんだけど。話し掛けられたの」
「マジで?いかついもんなー、小野部。俺、頭悪いからさ。あんまそういうの考えないんだよね」
「はぁ」
何が可笑しいのか、ケラケラと笑う優に、拍子抜ける。
だけど、
今まで笑っていた優が突然、真顔になる。
「アンタさ、良次の新しい恋人なんでしょ?」
耳元でそっと囁かれて、頭から冷水をぶっかけられたみたいに体が冷えていった。
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