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《4》
「よ、よせっ…」
「どうせ、良次の事フッたんだろ?じゃあ、良いじゃん」
「はなっ…、離せ…!ぶっ飛ばすぞ!」
できれば暴力は避けたかったけれど、こうなったら仕方ない。
それに、脅しに優が怯むかもしれない。
そう思い、睨みつけるけれど、当の本人は涼しい顔をしている。
「どうぞ、御自由に」
「え…」
「俺、あんま頭良くないからさ。もし殴られたら、びっくりして思わず殴られた経緯、全部話しちゃうかも?」
「なっ…!?」
「そしたら、良次どうなっちゃうかな?折角学校では優等生なのに、ホモって噂が広まったら、あいつ終わりだな。…おまけで不良グループのリーダーって事も話しちゃうかもね」
「お前…、何で…」
何でそんな事まで知っているのかと、優を凝視する。
何故、こいつが良次の裏の顔を知っているのかは分からない。
でも、もし、良次が不良で、あまつさえ不良グループのリーダーをしているなんて周りに知れたら、良次はどうなってしまうのだろう。
自分と同じように、誰からも話し掛けられずに、家に帰っても一人で、孤独に過ごすのだろうか。
良次が、そんな思いをするなんて、耐えられない。
「それに、俺、結構強いよ」
ゾワリと悪寒が走る。
優が喧嘩慣れしているのなら、尚更騒ぎにはしたくない。
こんな奴に負けるつもりは無いけれど、騒ぎを大きくして良次やおじさんに迷惑を掛けるのは避けたかった。
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