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《5》

「良次の事、黙ってて欲しかったら、自分でボタン外して?」 身体の中で、何かがズルリと引きずり下ろされる様な感覚に襲われる。 絶望した時、こんな感覚に襲われるなんて、知らなかった。 知りたくもなかった。 「良次とする時は男役?それとも女役?…まぁ、関係無いか。どっちにしろ、今からして貰うのは女役だしね」 屈辱と羞恥で震える指先で、自分のシャツのボタンを外す。 「そんなに良次が大切なんだ」 「……っ…」 「いつも、どうやって良次を誘惑するの?やってみせてよ」 困り果てて、首を横に振る。 「俺の言う事は聞けないって?」 「ち、違っ…。お、俺、誘惑なんて…、やり方…分からない…」 震える声で必死に言えば、優は驚いた顔をする。 「じゃあ、良次に全部して貰ってるの?」 「…っ」 「ふふっ、大切に可愛がられてるんだ?」 何故だか嬉しそうに優が笑った。 「ごめんね、もうちょっと我慢してね」 頭を撫でられて、訳が分からず涙目で見上げる。 「なるほど、男なんてキツいと思ってたけど…。確かに可愛いかもね…」 「やっ…」 優の手がはだけたシャツに滑り込み、肌を撫でる。 「ひっ」 咽の奥で悲鳴が引っかかる。 触れられた部分から、ザワザワと悪寒が這い上がる。 嫌だ。 良次以外の男に、触られるのも、えっちな事をされるのも嫌だ。 「りょ、良次ぃ…!」 目をきつく閉じて、俺は良次の名前を呼んだ。

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