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《9》
「俺、馬鹿だからこういうやり方しか思いつかなかったんだよね。でも、二人が仲直り出来たなら良かったじゃん?」
「お前は、本当に明るい馬鹿だな」
殴られて顔が腫れてる癖に、笑っている優を、良次が冷めた目で見ている。
良次に馬鹿を連呼される優が、少しだけ気の毒だと思った。
「騙す様なマネしてゴメンな~。ただ、俺も小野部が良次の事マジで好きなの分かって良かったわ」
「何言って…」
急に話を振られて焦る。
「良次の事守りたくて、俺の言いなりになったんでしょ?」
「それは…」
それはそうだけど、改めて言わないで欲しい。
第三者に言葉にされると、かなり恥ずかしいものがある。
結局、あれも優の演技だった訳だし。
「いや~、助かったわ。小野部喧嘩強そうなんだもん」
「は?」
「さっきの脅し。もし、小野部が良次の事なんてどうでも良かったら、抵抗してたでしょ?俺としても、本気で小野部をレイプする気は無いから、抵抗されたら引き下がるつもりだったけど、それでも殴られたら痛そうじゃん?まぁ、結局良次には殴られてんだけど」
「よく笑ってられるな、お前」
「まぁ、お互い大切に思ってるって事が分かって良かったじゃん?」
良次の方を見れば、良次と目が合う。
ゴタゴタした所為で今更だけど、慌てて駆けつけてくれたんだ。
何だか、嬉しい気持ちと、今までの気持ちが蘇ってきたのとで、強い感情の波が押し寄せてくる。
気がついた時には、泣いてしまっていた。
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