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ホントの気持ち《1》

「どこ行ってたんだよ…!?」 「利久…」 「何でお前が出て行くんだよ!?あそこは、お前の家なのに…!出て行くのは俺の方だろ…!?」 「利久…、泣かないで…」 「心配…した…。俺のせいで、良次が出て行っ…」 嗚咽で言葉が続かなかった。 「ごめん…、色々時間が掛かってしまって…。全部片付いたら、戻るつもりだったんだ…」 良次に身体を引き寄せられる。 ああ…。 やっぱり、良次の傍は暖かい…。 「あの~、俺まだ居るんですけどね」 「空気読め」 良次がシッシッとあっちへ行けと手を振る。 「へーへー、邪魔者は退散しますよ~」 「優、殴って悪かった。あと、ありがとな」 優は、ヒラヒラと手を振りながら、教室を出て行った。 「利久…、会いたかった…」 「良次…!俺、お前の傍に居たい…!」 「利久…?」  良次の腕に縋る様にしがみついた。 もう良次が何処かに行かない様に、力を込める。 この温もりを、手放したくなかった。 「もう、帰る場所も何処にも無いんだ…」 もう、良次の情けに縋るしかないと思った。 「家族も、居場所も、何も無いんだ」 良次の眉が顰められる。 「良次に他に彼女が居ても良い…。俺の事遊びでも良いから、一緒に居させて」 「遊び…?」 「良次の言う事、何でも聞くから、頼むから、一人にしないでくれ…」 良次が、本気で自分の事を好きじゃなくても良い。 ただ、傍に居たい。 そう思った。

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