100 / 346
《3》
「女関係も、きちんと整理しないまま夢中になって、そのせいでお前を傷つけた事に気づいた時には流石に反省したよ」
もう、十分良次が考えてくれてくれた事で嬉しかった。
だから、続く良次の言葉に、とても驚いた。
「だから、ちゃんと彼女達と話し合って別れてきたんだ」
「え?」
「お前、言っただろ?話し合いもしない、自己中心的な奴の言葉なんて信じられないって」
「あ…」
「おまけに顔も見たくないときたもんだ」
「あれは…」
「ショックだったよ。全部自分で蒔いた種だけど。だから、ちゃんと別れて、それから利久に改めて想いを伝えようと思ったんだ。その所為で、随分時間が掛かったけど」
この数日間、そんな事をしていたのかと驚いた。
「どっからどう見たって男だし、こんなでっかいのにな。何でこんなに好きなんだろ?」
言葉とは裏腹に、頭を撫でる手は優しくて、気持ち良い。
「信じて貰えないかもしれないけれど、俺は利久の事が本気で好きだよ」
「良次…」
「だから、俺と付き合って。絶対、大切にする」
信じても良いのだろうか?
こんなに自分に都合の良い事があるなんて。
そんな事があっても良いのだろうか?
「利久が行く場所が無くて、仕方なく俺に頼ってるんだとしても良い。弱みにつけ込む卑怯者だと思ってくれても構わない。でも、ちゃんと大切にして、絶対好きになって貰うから…だから、信じて欲しい」
違う。
仕方なくなんて思ってない。
卑怯者は、俺の方だ。
良次に拒否されるのが恐くて、本当の自分の気持ちも言わず、良次の同情を引こうとした。
俺の方が、よっぽど卑怯だ。
こんなに、良次は会えなかった時も俺の事を考えてくれていたのに…。
俺は自分の事しか考えていなかった。
ともだちにシェアしよう!