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《4》
もう、何もかも観念した。
俺は、この人が好きだ。
自分の生きてきた人生の中で、これ程までに離れたくないと思ったのは、生まれて初めてだった。
「だ、だけどっ…、俺っ…」
「利久…?」
「だって…、俺っ、デカいし、可愛くもねぇし、女の子みたいに柔らかくも無い…し、目つきだって悪いし」
捲し立てる様に言う俺を良次がポカンと見つめる。
そして、ふっと笑う。
「馬鹿だな…」
「馬鹿って言うなっ」
本当に、
本当に、悩んだんだ。
自分は男だし、良次には釣り合わないって。
だけど、良次はそんな事かという様に笑った。
「お前がデカくて目つき悪いのなんか、最初から分かってる事だろ」
「でも…」
「好きだよ、利久…。こんなに、誰かに夢中になったのは初めてなんだ。俺にとったら、どんな女の子よりも可愛いよ」
胸が、痛い…。
キュウッと締め付けられて痛いのに、何故だか、嫌じゃない。
「お、俺、良次の事が好きだ…」
「え…?」
「好きだ…」
「本当…?」
良次が驚いた様に、目を見開く。
「一人で、すげぇ悩んだんだ。俺、男だし…、こんなの変だって…。でも、俺…、良次の事が好きだ………」
「嬉しい…、利久…」
良次が幸せそうに微笑むと、何だか胸がいっぱいになる。
抱き締める腕に力を込められて、一人きりになってから、初めて満たされる様な思いがした。
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