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《2》

「ああ、一口貰おうかな」 「え…?」 そう言いながら、ペットボトルには触れずに、俺の身体を引き寄せてキスをする。 間近にある綺麗な顔に、顔が熱い。 もっと凄い事を、さっきまでしていたのに。 心臓が破裂するんじゃないかと思う程に早鐘を打つ。 「ご馳走様」 「…………は、恥ずかしい…やつ」 こんな、キザな事を自然とするなんて、どういう神経をしているんだろう。 そして、こんな事にドキドキしてしまう自分も最高にダサい。 「利久…、好きだよ…」 「お、俺も…」 それだけ言うのが精一杯だった。 まだ、口にするには恥ずかしい。 良次の様に、さらりと愛を囁くには、どうにも慣れるのは難しそうだと思う。 そんな俺を、愛おしそうに見つめる良次の視線にも体温が上がる。 もう、どうしようもない位に良次に夢中になっているのだと思い知らされた。 「利久、俺達…、家族になろう」 「か…ぞく……?」 突然の良次の言葉に驚く。 「この家で…、2人で家族になろう」 「良次と?」 「うん」 「俺と?」 「うん」 家族…。 その言葉はなんて暖かいんだろう。 物心ついた時から、母さんと2人っきりの家族だった。 それで、充分だったのに。 母さんが亡くなって、俺には家族と呼べる人がいなくなった。 本気にしても良いのだろうか? 良次の事を、頼りにしても良いのだろうか? 気がつけば、またボロボロと涙が零れていた。 「利久…?」 「俺…、なりたい…!良次と、家族になりたい…!」 「利久はよく泣くな…。泣き顔も可愛いけど、笑ってよ…。利久の笑顔が見たい」 そう、良次に言われたけど、とてもじゃないけれど、笑うなんて出来そうもなかった。 俺には、もう家族がいなくて。 一人で生きて行かなきゃならない筈だった。 良次は、出会って間もない自分を好きになってくれて、そればかりか家族になろうと言ってくれている。 嬉しすぎて、涙が止まらない。   叶うなら、ずっと良次の傍にいたい。 俺は、良次に抱きついて、いつまでも声を出して子供みたいに泣いていた。

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