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二人の生活《1》
「何か必要な物とかあるだろう?」
「………………無い」
かれこれ1時間、こんなやり取りを繰り返していた。
あまりにも俺の荷物が少ないと、良次が必要な物を揃える様に言ってきた。
だけど、別に今の荷物で事足りるし、困っている事も無い。
「いや、何かあるだろ。例えば下着とか」
「別に二枚あれば十分だろ」
「十分じゃねぇよ」
潔癖性っぽい良次は、俺の言葉にあからさまに嫌そうな顔をする。
やめろよ。
そんな目で見るの。
俺が不潔みたいじゃねぇか。
「大体、金が勿体ねぇ」
「だから、秋人さんにお前の生活費は貰ってるし、心配しなくてもそれ位俺が買ってやる」
良次の言葉に驚いて、慌てて首を横に振る。
「そこまでしてもらう訳にはいかねぇよ」
「彼氏なんだから、それ位させろ」
「俺だって男なんだけど…」
抱かれているからと言って、女扱いされるのはあまり良い気持ちはしない。
「第一どうやって生活してたんだお前」
「別に…普通に」
「………」
「可哀想な目で見るなよ」
確かに貧乏で裕福な暮らしとは程遠い生活を送っていたし、良次からしたら携帯も持っていない俺なんて野生児みたいなもんなのだろうが、自分にとっては何の不自由も感じていないのだから、急に必要な物を言えと言われても困る。
「……出掛けるぞ」
「へ?どこに…?」
「お前と押し問答してても仕方ないからな」
急に良次に腕を引かれ、俺は訳も分からず連れ出された。
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