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《4》

「…………」 「利久、お待たせ」 俺の側へと近づいてきた良次に、ようやく我に返る。 「な、なぁ…、俺、こんな高い服買って貰っても困るよ」 「プレゼントなんだから、黙って着ときゃ良いんだよ。それとも気に入らねぇなら、他の店も見てみるか?」 「違う…!そうじゃなくて…!」 「欲しいもんがありゃ、言えば買ってやる」 「だからっ…!」 何故伝わらないんだろう。 こんな高価な服を買ってもらいたい訳じゃない。 まるで、これじゃあ今までの自分を否定されているみたいで、辛い。 そんなに、良次の目に映る自分は見窄らしかったのだろうか。 「次は…、家具とか日用雑貨も要るだろ?靴も、そんなボロボロのスリッパみたいのじゃなくて、ブーツとか色々いるな…」 「…………」 良次に物を買い与えられて、良次の好みに変えられてしまう事が、自分の意思等関係ないと言われている様で、酷く胸が痛んだ。 「利久…?」 立ち止まって動かない俺を訝しげに良次が見つめる。 「何で…、勝手に決めるんだよ!?俺、頼んでねぇ…!」 「はぁ?俺がしたくてしてんだから、遠慮する事ねぇだろ」 自分の為に良次は色々買ってくれたり、してくれているのに、何故だか正体の分からないイライラに胸がざわつく。 さっきの洋服だって、良次が俺の事を思ってしてくれた事だと分かる。 ただ、自分と良次の違いが、価値観が、全く違うのだと思い知らされて、それが想像以上にショックだった。

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