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《6》

「利久は、嫌…?」 心配そうに顔を覗き込む良次に、胸の中が熱くて溶けてしまいそうになる。 「嫌…じゃないけど、こんな風に高価な物を買って貰っても、俺は返せないし…、一方的に俺ばっかしてもらうのは、罪悪感感じちまう…」 「…可愛いな、そんな事考えてたのか」 「な、何が可愛いんだよ…」 「心配しなくても、新しい洋服を着た利久を見れて、俺も楽しんでるから良いんだよ」 「そ、そう言われても…」 それでは、結局俺がしてもらうばかりの気がして、納得がいかない。 「利久には利久が出来る事で返して貰うから、変な気は遣うな」 「う…、で、でも…」 こんな風に必要な物を買って貰って、料理だって俺は出来ないから、良次が作ってくれているし。 掃除だって、良次が俺の部屋まで綺麗に掃除してくれている。 俺が出来る事なんて、何も無い気がする。 どんどん落ち込む俺に、良次が更に追い打ちをかける。 「それとも利久は俺が喜んでるのに、嫌だなんて言って、俺の楽しみを奪うのかよ?」  「そんなつもりじゃなくて…」 「まぁ、俺も少し強引だったな…。利久が何が好きか分からないし、最低限着る物は必要だと思ったんだけど…」 「500円のTシャツとかで良いんだよ、俺は…」 「馬鹿言え、そんな値段のシャツある訳ねぇだろ」 「…………」 あるわ。 そう心の中で突っ込んだけれど、口には出せなかった。 良次との価値観の違いは、そう簡単には埋められそうもないと心の中で思った。

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