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デート《1》

「利久…、おいで…」 「う、うん…」 イルミネーションの灯りをすり抜けて、良次が俺の手を引く。 あの後、良次に連れて来られたのは、イルミネーションが煌めく遊園地だった。 「すげぇ」 目の前一面が、キラキラ色取り取りに輝いている。 宝石箱をひっくり返した様に辺りが光を放ち、まるで昼間の様に明るい。 「利久は、遊園地に来たのは初めて?」 「子供の頃連れて来て貰って以来だし、夜の遊園地は初めてだ…」 「そっか」 「母さんにも、見せてやりたかったな…」 きっと、母さんも一緒に来れたら、喜んだと思う。 こんなに綺麗なんだから。 「利久は、お母さんが本当に好きなんだな」 「良次も子供の頃遊園地来てたのか?」 「いや…、俺は…、でかくなってからだな。初めて遊園地に来たのは。優達と来た事もあるな」 「家族とは来た事ないのか?」 「………………」 「良次…………?」 急に黙り込んだ良次に首を傾げる。 「そうだな…、今日が初めてだ」 「え…?」 「家族と遊園地来たの」 一瞬良次の顔が険しくなった気がしたけれど、すぐに笑顔に変わる。 それが少しだけ引っかかったけれど、良次の顔が近づいてきて、すぐにそんな事は忘れてしまった。

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