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《4》

一頻り、平謝りする優に冗談だと告げた所で、授業が始まる。 見慣れない学校に、見慣れない生徒。 浮いているのに変わりは無いけれど、自分の状況を思い出すと、すがに気が滅入る。 ここ最近のドタバタで忘れてはいたけれど、自分は新しい生活に早く慣れなきゃいけなかったのだ。 授業だって、前の学校でも真面目に受けていた訳じゃない。 けれど、前の学校よりも進んでいる様な授業の様子に完全に教師が何を言っているのか分からない有様だった。 途方に暮れていると、隣りの良次が俺の腕をつつく。 「何処か分からない所ある?」 「分からない所っつうか…。アイツが何言ってんのかサッパリわからねぇ」 教師を指指すと、良次が何故か笑う。 「こっちの方が授業の進みが早いのかな?利久は、平均の点数はいくつ位だった?」 「いくつ位…。赤しか採った事ねぇけど…」 俺の言葉に、良次の顔色が変わる。 「赤しかって…、本当に…?」 まるで信じられないものでも見るかの様な良次の様子にムッとして睨みつける。 「悪かったな…、馬鹿で」 「利久は馬鹿じゃないから、やり方さえ分かればもっと点が採れるよ」 「え…?」 予想外の良次の言葉に驚いて、その顔を凝視する。 「一緒に進級出来ないと俺が困るから、俺に勉強教えさせてよ。ね?」 優しく囁かれて、ドキドキと胸が高鳴る。 勉強なんて、全く興味が無い癖に思わず頷けば、良次が満足げに微笑んだ。

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